ムービープラスにて4月は毎週土曜日20:55よりアカデミー賞受賞作品などをラインアップ！
2021年のアカデミー賞は4月25日（現地時間）開催です。今年はどの作品がオスカーを手にするのでしょうか。今回は2019年作品賞・助演男優賞・脚本賞を獲得した『グリーンブック』を紹介します。

1962年のアメリカが舞台。アフリカ系ピアニスト“シャーリー”が南部へ演奏ツアーに行くことになり、イタリア系のちょっとガサツな“トニー”を運転手兼用心棒として雇い「グリーンブック」を携え旅に出るというお話。

「グリーンブック」というものが存在していた事を初めて映画で知りました。その表紙には、「FOR VACATION WITHOUT AGGRAVATION」と書かれています。簡単に言えば、「嫌な思いをしない旅行のために」です。南部はまだ差別があり白人用、黒人用の施設が分けられている所が沢山あった為に、黒人向けにこのようなガイドブックが発行されていたのです。

ストーリーは簡単に言えばロードムービーですが、時代背景がこの作品の大きなポイントです。シャーリーは高い教育を受け裕福に育ったピアニスト。ガサツなトニーが奥様に手紙を書くシーンでは、スペルや表現方法をシャーリーが優しく教えてあげることも。初めは距離のあった二人ですが、少しずつ思いやる気持ちが生まれ、徐々に友情が育まれていきます。

運転中にフライドチキンを食べるシーン、運転席からトニーが後部座席のシャーリーにチキンを差し出します。
手づかみでしかも初めてフライドチキンを食べるシャーリーは困惑気味。
シャーリー：「どうみても衛生的に問題がある……」
トニー：「それがなんだ。食え。俺のオヤジは何をするにも100％の力を出せ、仕事する時も笑う時も、食う時は最後の食事だと思って食えとな……（省略）」
シャーリー：「骨はどうするの？」
トニー：（窓ガラスオープン）「こうすんのよ」
手にしていた骨を窓の外にポイッと投げてしまう。二人のバックグラウンドがよく分かる笑えるシーンです。

道中暴力沙汰でトニーが捕まってしまう事もありましたが、そんな時にシャーリーは、「暴力では何も解決しない。威厳（Dignity）を保つことが勝利だ。」と諭すシーン。ここも印象的でした。
1962年といえば、マーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師が「I have a dream」とワシントンで演説する1年前です。シャーリーの姿が一瞬キング牧師と重なって見えました。人として成熟度が違う！

裕福な白人社会で育ったシャーリーは、この旅で自分の存在と現実のギャップに慣れようとしますが、南部の農園を背景にしたシーンがとても印象的でした。黒人たちが作業の手を止めて、運転手を抱えて後部座席に座っているシャーリーを静かに見続けます。異様なまでの違和感にこちらも心がざわついてしまいます。シャーリーが体感する自分が黒人社会でも白人社会でも生きにくいと感じる心を最も強烈に映したシーンでした。ここはお見逃しなく！

シャーリーを演じた“マハーシャラ・アリ”は助演男優賞を受賞。海外ドラマ「ハウス・オブ・カード野望の階段」でロビイストのレミー役でもその上品さと頭の良さが表現されていましたが、今回のシャーリー役はベストマッチでした。

トニーを演じた“ヴィゴ・モーテンセン”は役によって別人では？と驚かされる表現者。細身の役をしたと思ったら、本作品ではイタリア系のイメージそのままに少しお腹も出て、役に完全にはまっていました。（ヴィゴ・モーテンセンが受賞でもよかったのでは……とも思います）

「グリーンブック」を通して育む二人の男の友情物語。きっと最後は心が温まるはずです。お楽しみに。

番組情報

【番組名】グリーンブック

【放送日時】4/24（土）20:55～ ほか

【放送チャンネル】ムービープラス（122ch）

【視聴可能コース】マックス／ビッグ／アルファエース